映画の父と言われるリュミエール兄弟が最初に上映したのは、終着駅に機関車が到着するシーンだったそうだ。そのあまりのリアリティに、映画館のお客さんは走って逃げたとか。
当時、彼らが開発した複合映写機シネマトグラフは新しいテクノロジーの一つに過ぎなかった。そこから豊かな映画芸術が生まれていくなどと誰が想像しただろうか?
ジョルジュ・メリエスは月旅行のイメージをユーモア一杯に描き、映像の世界に物語性を持ち込んだ。
ルイス・ブニュエルは、感覚をえぐるようなシュールリアリスティックな表現を開拓し、エロティシズムや耽美性で人々を魅了した。
セルゲイ・エイゼンシュテインはモンタージュ理論を開拓し、人間の感情を表現する映像文法を構築した。
あれはあれよという間に、映画は芸術へと変化した。今や、カンヌやオスカーは最も権威ある芸術賞の一つになった。
2019年現在、8KもVRもレーザーも、技術の文脈でしか語られていない。しかし、僕らが想像するよりもずっと早く、これらの技術を使いこなし、誰もが想像しないような絢爛な世界を紡ぎ上げるアーティストが現れることだろう。
それは21世紀のメリエスであり、ブニュエルであり、エイゼンシュテインである。
MADD.はそのための実験場であり、社交場であり、工房である。
MADD.では、MADD. Awardへ応募いただいた作品、応募者プロフィール、作品のコンセプト、寄稿等を掲載した"MADD. book"を毎回制作し、MADD.の足跡として残していきたいと考えております。