TITLE

a day by the sea

  • Type実写
  • CONCEPT
    僕は写真を撮る。お仕事でデザインもやらせて頂いている。どちらかと言われれば今回のは写真の方。写真は目的があって撮り始めた訳ではなく、気が付いたら何となく撮り始めていた。近頃は「いや、そうじゃない」「これだ」「いや、違う」等と一人で呟きながらイライラと作業を続けている。
    テーマの設定には毎回難儀する。自分の興味の対象は常に日常的で何でもない物、コジンマリとしている物になりがちで、例えば、西陽があたっている渇いたジャリジャリとしたコンクリートの割れ目を「良いなあ」と思ってしまう。社会批判、暴力、不安、愛情の裏返し、どれも写真のテーマとしては何となく違う気がする。結局のところ自分でも訳が分からない。

    初めての動画、しかも8k映像のコンペに参加できる機会を頂いた時、2017年から今も通い続け、ポリネシアにルーツを持つ海上団体パドリングマイナースポーツ、アウトリガーカヌー(6人乗り)とそのベースである横須賀市佐島の綺麗な海を、高画質・高精細にドラマチックに、疾走感や海を漕いで行くあの独特な感動とともにきっと納められるばずに違いない、と思いつく。あの時点ではそれ以外は考えられなかった。製造から30年以上経った中古フィルムカメラではなく、最新テクノロジーが、臆病な僕をいつも以上に後押しもしてくれた。
    編集作業も終わりに近づいた頃、ふと思った。またいつものようにテーマから外れ、大好きな乾いたコンクリートを撮るようなことをやってしまった。堪えきれずにカメラを忘れカヌーで漕ぎに出てしまった。途中で表現なんかどうでもよくなってしまった感は否めない。

    ただこの、普段漕いでばかりで側から見る事が出来なかった映像「a day by the sea」は、あの海を眺め「ふぅ、良い一日になりそうだ」と言うノンビリした気配に満ちていて、同時に「今日こそはイメージ通りに漕ぐぞ」という意気込みを僕に思いださせてくれる。

    今回、快くムービーを回してくださった佐野さん、無知な僕に編集作業をご享受くださった金村さん、カーリーさん、そしてこの機会をくださった佐藤さん、滝口さんとカヌークラブspcのみんな、敬愛するiwalaniとその旦那様達、この場をお借りし御礼申しあげます。本当にありがとうございました。
  • 制作環境
  • Organization
    株式会社トラウト
  • 応募者
    プロフィール
    • 原七郎

      1981年 神奈川県鎌倉市生まれ
      芝浦工業大学卒
      2011年より写真を発表。
      2015、2017年写真集装丁デザインにてADC賞受賞。
  • 講評

    カヌーを台車にのせる際の引きの映像が素晴らしいです。
    カヌーを運ぶ男たちの汗、それを見守る女性たちのまなざし、口をはさみたそうなおじいちゃん、わくわくを隠せない子供、笑顔が愛おしいおばあちゃんと、様々なドラマが垣間見られます。
    またカヌーのアップのシーンでは、プラスチックの質感や水滴が非常にリアルに映し出されており、8K映像の良さを感じる事ができました。
    身内向けのホームムービーのようになってしまったのは残念ですが、楽しい雰囲気は十分に伝わってきました。