TITLE

「よ市」を記述する

  • Type実写
  • CONCEPT
    岩手県盛岡市で開催されている「材木町よ市」におけるビール店舗周辺では、サービスの利用者による、自発的なコミュニティの生成等のユニークな状況が散見されます。その状況を対象として、全天球映像記録やインタビュー調査を実施することにより、場の成り立ちや構成要素を明らかにしようとしました。

    本映像は、その過程において全天球映像記録を用いることにより、現場にさらなる多角的な気づきや解釈をもたらすことを目的として制作されたものです。

    そこで『Exhausting a Crowd(群衆を書き尽くす)』(Kyle McDonald , 2015)で志向された表現のような、アノテーションと実写で構成された映像空間を、エスノグラフィーにおける現場の記録の方法として採用できないかと考えました。

    映像に現場で実際に起こっている事象を事実である「動的なテキスト」として、また現場の人々へのインタビュー調査や撮影された映像の視聴から生まれた客観的な解釈を「静的なテキスト」としてとして映像上に反映させました。そして、現場の映像とフィールド調査の結果を同時に視聴できる形にしました。

    画角や解像度が制限されてしまう従来の技術では、現場記録は記録するエスノグラファー(現場に行く人)にある種の依存をしていました。全天球映像や8K映像の普及によって、フィールドリサーチは「現場に出向いていない人」の参加が可能になり、現場への理解や解釈は、より多角的なものとなりうるでしょう。8K技術により、フィールドリサーチはどのように拡張するのでしょうか。
  • 制作環境
    カメラ:Go-Pro OMNI
    レンズ: 同上
    編集環境:Adobe Premier / Autopano color
  • Organization
    慶應義塾大学大学院  政策・メディア研究科 水野大二郎研究室 修士課程2年
  • 応募者
    プロフィール
    • 廣瀬花衣

      1) 慶應義塾大学大学院  政策・メディア研究科 水野大二郎研究室 修士課程2年 廣瀬花衣
      慶應義塾大学経済学部卒業
      慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科在学中。
      全天球映像とアノテーションを組み合わせたフィールドの記録を通じて複雑な現場を多様な視点で理解可能になる映像空間をつくる。Digital ethnographyとService Designが関連分野。
      2)慶應義塾大学環境情報学部准教授 水野大二郎
  • 講評

    カイル・マクドナルドの作品にインスパイアされた、映像的エスノグラフィーの試み。
    ある地点を定点観測してみると、多様な人々が行き交い、それぞれが異なる世界を生きていることが見えてきます。その着眼点は面白いと思います。
    ただ、記述する文脈が多すぎて情報が入りにくく、かえって煩雑になりすぎてしまったところが、少々残念。
    「何」を記述して伝えたいのか、ポイントをもっと整理し、なぜそれが映像であると面白いのかを深掘りしてみるともっと良くなると思いました。